ドローンによる空撮や映像収集の際、意図しない形で個人の顔や車のナンバー、私有地の様子などが映り込むことがあります。こうしたプライバシー・個人情報の問題は、ドローンを使ううえで非常に重要かつデリケートな課題です。ここでは、難しく感じられがちなプライバシー保護の要点を整理してみます。

なぜプライバシー・個人情報の保護が重要か

  • 法的リスク
    • 日本では「個人情報保護法」や「刑法(住居侵入や迷惑行為に関する規定)」などが適用される可能性があります。
    • 許可なく他人のプライバシーを侵害するような行為を行うと、賠償責任や刑事罰に問われるリスクがあります。
  • 社会的信用の喪失リスク
    • ドローンを運用する企業や個人が、無断撮影でトラブルを起こすと、世間からの信頼を失う恐れがあります。
    • 顧客や取引先からのイメージダウンも大きな痛手となります。
  • 本人の権利保護
    • 撮影される側の立場に立つと、知らないうちに自宅や自分の姿が映像として記録・拡散されるのは大きな不安要素です。
    • 「安心して生活できる権利」を守ることが社会的にも求められています。

具体的なリスク例

  • 他人の顔や車のナンバーが映り込む
    • SNSや動画共有サイトなどにアップすると、本人の意思に反して個人情報が広まる恐れがあります。
  • 住宅地やベランダなど私的空間の撮影
    • 無断で人の住居内やプライベートな空間を撮影すると、プライバシーの侵害とみなされる場合があります。
  • イベント・集会での無断撮影
    • 多数の参加者がいる場所では、撮影対象と知らずに多くの個人情報を収集・記録してしまう可能性があります。

法的な観点で押さえておくべきポイント

  • 個人情報保護法
    • 個人情報(特定の個人を識別できる情報)を取り扱う場合、適切な取得方法や利用目的の明示、保管方法の安全管理が求められます。
  • 肖像権・パブリシティ権
    • 人物の顔や姿を無断で撮影・公表すると、肖像権の侵害にあたる可能性があります。
    • 特に有名人の画像や映像はパブリシティ権(経済的価値)の問題も絡むため注意が必要です。
  • 地方自治体の条例
    • 公園や公共施設内での撮影に際して、許可申請や周囲への周知を義務付けている自治体もあります。
  • 刑法・民法
    • 住居侵入や器物損壊、名誉棄損、プライバシー侵害の民事責任など、多方面の法律が関わることがあります。

トラブルを回避するための実践的対策

  • 事前の許諾・告知を徹底する
    • イベント会場や私有地などで撮影する場合は、管理者や参加者に「ドローン撮影を行う旨」を明確に伝え、許可を得る。
    • 撮影が行われることをわかりやすく掲示するなど、周囲への告知を行う。
  • 撮影範囲の工夫
    • ズーム機能やカメラアングルを調整し、個人が特定できるような映り込みをできるだけ避ける。
    • 不要な部分をソフトウェアでぼかす(モザイク処理)などの手法も有効。
  • 撮影データの保管・処分を適切に行う
    • 撮影後のデータは、必要最低限の期間だけ保管し、不要になったら速やかに削除・処分する。
    • パスワード管理や暗号化、アクセス権限の設定など、セキュリティ対策を施す。
  • 業務委託・共有時の契約・管理
    • 撮影データの編集や解析を外部業者に委託する場合は、守秘義務契約(NDA)を結ぶなど、明確なルールを設定する。
    • データをやり取りする際は、安全なファイル転送サービスを利用するなど、流出リスクを最小化する。
  • 肖像権・著作権の確認
    • 撮影した映像を商用利用する場合は、映り込んだ人物や建物の権利関係を確認する。
    • 特に映り込みが明確な場合は、本人の同意を得るか、映像上で完全に識別不能になるよう加工する。

運用ルール・マニュアルの策定

  • プライバシーポリシーの作成
    • 企業や団体として運用する場合は、「取得した映像はどのように利用・保管するのか」を明文化し、従業員全員が共有する。
  • 撮影手順・データ管理手順をマニュアル化
    • フライト前の告知、撮影後のデータ確認・編集、データ保管・廃棄のフローを定めておく。
  • 定期的な研修・情報共有
    • 操縦者やスタッフが最新の法令やルールを把握していないと、知らない間に違反行為を行うリスクが高まる。
    • 定期的に研修や勉強会を開き、アップデートされた法令や運用事例を共有する。


まとめ

  • 撮影対象や場所に対する事前確認・許可
  • 不必要な個人情報を極力取得しない、映り込ませない工夫
  • 撮影データの適切な管理(保管・削除・外部委託管理)
  • 定期的な研修やマニュアル整備でスタッフ全員の意識を高める
キジえもん

プライバシーや個人情報保護の問題は、「侵害してしまった後のリスク」が非常に大きい分野です。

平野

撮影前の計画を十分に行い、周囲への配慮とデータの慎重な取り扱いを徹底することで、ドローンのトラブルを大幅に減らすことが可能です。ドローンを安全かつ社会的に受け入れられる形で活用するために、これらのポイントを意識して運用することが重要です。