ドローンを飛ばす前に知っておくべき大切なポイントの一つは、「空を自由自在に飛べるわけではない」ということです。これは、自動車が道路を走る際に運転免許が必要なのと同様に、ドローンも空を飛ぶ際には一定の規則に従わなければならないということです。特に、特定の場所や条件下で飛行する場合には、許可や手続きが必要です。

この記事では、特定の飛行に関連して必要となる主な手続きである以下の3点について解説します。

1.飛行の許可・承認

特定の飛行(例:空港周辺、150m以上の高度、人工集中地区での飛行など)を行う際には、国土交通省から「飛行の許可・承認」を取得する必要があります。
自動車は整備された道路と明確な交通ルールに基づいて運転され、信号や制限速度などの規則が社会全体に浸透しています。
一方、ドローンには空中に道路のような仕組みがなく、広大な空間を飛行します。そのため、操縦者や機体の情報、飛行エリアや経路、日時などの飛行計画を策定し、ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)で飛行許可の申請を行う必要があります。

ドローン飛行の許可条件として、「操縦者が10時間以上の飛行経験を持っていること」が求められます。しかし、10時間の飛行経歴がない場合でも、十分な経験を持つ監督者の指導の下で飛行を行うなど、適切な安全対策が講じられていれば、許可や承認が下りることもあります。

申請は飛行開始予定日の10日前までに提出する必要があります(土日祝日を除く)。申請内容に不備があると、追加確認に時間がかかる可能性があるため、余裕を持って早めに準備を行うことが重要です。

2.飛行計画の通報

ドローンを特定の空域で飛ばす場合には「ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)」で飛行計画を登録(通報)する義務があります。
これにより、他の航空機やドローンと干渉することなく、安全に飛行できる環境を確保することが目的です。
また、飛行計画を事前に提出することで、万が一のトラブルが発生した場合にも、迅速な対応が可能になります。

ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)に飛行計画を登録する際「飛行許可番号」という項目がありますので、まずは飛行許可を申請し、許可番号が下りた後に飛行計画を通報する流れとなります。

飛行計画の通報をせずに特定飛行を行った場合、航空法第157条の10に従い、30万円以下の罰金が科せられます。

3.飛行日誌の作成・携行

ドローンの飛行日誌は、2022年12月5日に改正された航空法で定められており、操縦者は必ず作成・携行する必要があります。
飛行日誌は、飛行日時や場所、飛行時間を記録したもので、紙媒体や電磁的記録のいずれでも作成できます。

飛行日誌の携行とは、飛行場所まで飛行日誌を持参し、その場において速やかに確認ができる状態にしておくことを意味します。
特定飛行(DID、夜間飛行、目視外飛行、30m接近飛行など)を行う場合は、飛行日誌を携帯していないと10万円以下の罰金に課せられます。

また、特定飛行以外の飛行であっても飛行日誌の記載が推奨されています。

飛行日誌テンプレート(PDFデータ)

国土交通省の「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」に、飛行記録・日常点検記録・点検整備記録が格納されています。
PDF形式なので、紙に印刷して記録する際にご使用いただけると思います。

飛行日誌テンプレート(EXCELデータ)

一般社団法人DRC協会の公式サイトでは「飛行日誌Excel変換.xlsx」を公開しています。
ダウンロードしてタブレット等で使用されると大変便利かと思います。

飛行日誌(WEBアプリ)

一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)会員が利用できる無料サービスです。このアプリは、航空局が求める飛行日誌の必要項目を網羅し、機体の飛行ログと自動的に同期します。さらに、ワンクリックで飛行日誌のレポートを自動生成でき、掲載項目のカスタマイズも可能です。

飛行日誌(iPhoneアプリ)

JULC会員が利用できる無料アプリ「JULC飛行日誌アプリ」です。無人航空機飛行の飛行日時、場所、飛行時間を記録する飛行日誌を国土交通省指定のフォーマットで簡単に作成できます。 

飛行許可申請の要不要を決める3つの飛行カテゴリー

無人航空機の飛行形態については、リスクに応じた3つのカテゴリー(リスクの高いものからカテゴリーⅢ、Ⅱ、Ⅰ)に分類され、該当するカテゴリーに応じて手続きの要不要が異なります。

カテゴリーⅠ

特定飛行に該当しないので、飛行許可の申請は不要です。

カテゴリーⅡ

空撮や測量・点検等で多くの方に利用される飛行形態となるのがこのカテゴリーⅡです。
航空局が飛行禁止と定めた特定飛行の中で、飛行許可の承諾を得る申請になりますので、安全を重要視した飛行プランを策定し、墜落による人への危害を未然に防止する立入管理措置や対策を提示する必要があります。
カテゴリーⅡでは、飛行経路直下に第三者(人)が存在する状況での飛行許可は承認されません。

キジえもん

国家資格者の一等無人航空機操縦士および二等無人航空機操縦士は、機体認証を受けたドローンで飛行する場合に限り、カテゴリーⅡでの一部飛行において、許可申請が不要となります。

平野

「自動車運転免許=無人航空機操縦士」や「車検を受けた自動車=機体認証を受けたドローン」と、自動車に例えて考えるとわかりやすいですね。

飛行許可の申請が不要な場合でも、飛行計画の通報飛行日誌の作成・携行は引き続き義務付けられていますので、十分に注意が必要です。

カテゴリーⅢ

国家資格者の「一等無人航空機操縦士」のみが飛行許可申請できる特定飛行です。
この飛行では、飛行経路において補助者を配置せず立入管理措置を講じないで第三者(人)の上空で特定飛行を行います。
人に危害を及ぼす可能性が高い飛行なので、「一等無人航空機操縦士」を取得した操縦者が、「第一種機体認証」を受けたドローンで飛行するのが絶対条件になります。
万が一の事態を想定した賠償保険の加入も含め、安全性に関してのプラン策定は特に重要です。

飛行許可申請の具体的な流れ

  1. 申請方法

    ドローン情報基盤システム(DIPS)にアカウントを作成。DIPSにて申請書を作成する。

  2. 必要な書類

    飛行計画、操縦者の情報、機体の情報、加入している保険など

  3. 審査期間

    申請内容によって異なりますが、数日から数週間かかる場合も。

  4. 申請時の注意点

    誤った情報を入力すると、申請が却下される可能性があります。

飛行許可取得の役割

  • 安全な飛行
    • 飛行計画に基づいて飛行することで、事故のリスクを減らすことができます
  • 法的な問題を回避
    • 許可なく飛行すると、罰則が科せられます
  • 地域住民との円滑な関係
    • 事前に許可を得て飛行することで、地域住民の理解を得やすくなります
キジえもん

申請手続きにはある程度の時間と手間がかかり、一部のケースでは、申請費用が発生する場合があります

ドローンの飛行は、非常に楽しいアクティビティですが、同時に責任が伴う行為です。 飛行許可をしっかりと取得し、万が一に備え、ドローン保険の加入も検討し、安全にドローンを楽しみましょう。